滑落事故発生(Snow surface accident)

2019TMB
スポンサーリンク

予定ルートとは違ってると気が付く

Lac Blanc小屋から女性の後ろをついて歩いていた。大きな岩を避けながら眼下には急坂の崖が続き集中しないと非常に危険な道が続いた。

とても景色を楽しむ余裕などあるはずがなく、女性から遅れることなくペースを維持することだけに必死であった。

かなり進んでからふと気が付いた。清水氏著のガイドブックによればLac Blanc小屋からフレジュールまでの道は最初が急坂の下りが続くはずである。しかし進んでいる道は等高線に沿った道のような気がする。ちっとも標高が下っている気がしないのだ。

ここでもし冷静であれば、かつGPSに習熟していれば、現在地が予定ルートから外れていることを確認し、見逃した分岐点まで戻るという選択が出来たはずである。

しかしこの時は現地をよく知っている女性の後を行けばフレジュールまで行けると思い込んでおり、他の選択肢は全く頭の中になかった。そこで女性に予定のルートは最初にもっと高度が下がるはずなので間違ったとアピールした。

そうすると引き返そうということになり、来た道を分岐点まで戻ってくれることになった。

スポンサーリンク

引き返し現場と滑落現場のクローズアップ

上の図1で全画面にし拡大表示でじっくり観察すれば理解できるはずだが、以下に3つの図を掲げておく。

この時の心境にピッタリの言葉がある。敗北した軍隊のことだと思うが「進むも地獄退くも地獄」

図2ー途中引き返し現場と滑落現場

計画ルートではないというアピールで分岐まで戻ろうとしたが、迷走し結局元のルートに戻った経緯がGPSログに残っていた。そのずっと先に小さな輪のようになっているのが滑落現場である。

図3ー引き返し現場

間違えた分岐点まで戻ろうとしたものの、迷走の末結局元のルートに戻ってしまった様子がよくわかる。

この辺りは大きな岩を避けながら、足を踏み外せば断崖の下に落下して命はないような一瞬の気の緩みも許されない道であった。精神的・体力的に非常に消耗した。

ここで引き返す途中Lac Blancで顔に見覚えがある数人のグループとすれ違った。一緒に写真を撮りたいというのでリクエストに応じたが、こちらの気分はそれどころじゃなかった。

図4ー滑落現場

スポンサーリンク

分岐点まで戻れず再び元のコースに

上の図2でわかるように見逃した分岐点まで戻ろうとしたが、先導役の彼女が道を間違えたようで大きなループを描いて最初のコースに舞い戻ることになった。

なにしろ言葉が通じないのでお互いの意思疎通が難しく推測で判断するしかない。このまま進めばフレジュールまで下るポイントに着くから、そこから下れば良いと言っているように理解した。このような一瞬の気の緩みも許されないような道をこれからも進むのかと思うと絶望的な気分になった。ヘリコプターの救助を頼みたいくらいだ。

岩場と積雪斜面の繰り返しという危険な道が続く。積雪斜面は等高線に沿って斜面を横切って歩くので神経が磨り減る。このような場面ではトレッキングポールが役立つ。持ってこなかったことが悔やまれた。

出発前にスイスアルプスで高齢者が滑落事故により死亡したというニュースがあったことが頭をよぎった。

スポンサーリンク



滑落発生 九死に一生

何度目かの積雪斜面の図4の場所で雪面を横切って進むうちに滑落した。斜面の先は崖になっておりそのまま落ちれば命はない。必死で途中で止まろうともがいて何とか30mくらいの落下でようやく止まることが出来た。積雪が少なくなりところどころで地肌が見えていたことが幸いだった。

先導役の彼女はコース上に立ち止まり心配そうに見ているがどうすることもできない。斜面に腰を下ろした状態で停止し、体力と気力の回復を待ってどうしたら道に戻れるか暫し思案した。落ちた斜面をそのまま登るのは無理なように思えた。

バッグの中にあったアイゼンを装着するしかないと思い付き、斜面に停止した状態を維持できるよう慎重にアイゼンを装着することに成功した。道で見ていた彼女のアドバイスで横移動し地肌が見えた部分まで何とか辿り着くことが出来、そこからはアイゼンの効果で慎重に元の道まで上がることが出来た。

多分時間にすれば30分くらいかもしれないが、自分にとってもっと長く感じた。しかもよく覚えていないが滑落途中必死でもがいたことで体中あちこちに痛みが残っていた。この時に失った体力のためフレジュール経由でバス道まで辿り着くのが悲惨なことになった。

やっとのことで元の道に復帰できた時は喜びよりも体力を使い果たした疲労感が大きく、これから先も同様の危険な道が続くことに対する恐怖感が大きかった。

工事用道路に辿り着く

再び歩き始めた時に先導役の彼女が自分のトレッキングポールの1本を貸してくれた。1本でも雪道を歩くには安定感が増すことを実感した。

その後も何度か雪斜面と岩場を繰り返してからロープウェイのものらしい大きな設備に辿り着き、そこからは工事用と思われる道路で下れるようになった。

道路といっても大きな工事用車両のため歩くには向いていない。幅は広いが傾斜が急で砂交じりの土の上は非常に滑りやすい。つづれ織りの道路で何度も滑って尻餅をつきながら、それでもそれまでの危険な道を脱したことで少しは希望の光が見えてきた。

工事用道路といっても部分的には悪路があり、滑落で体力消耗した身には何度も道端に座り込むので先導役の彼女の姿が見えなくなることが度々であった。わずかな体力回復で再び歩き始めると彼女が待ち構えている場所に着いてホッとすることを何度か繰り返した。

この時点で今日のベラシャ小屋への当初計画は放棄し、シャモニーに戻る意思を彼女に伝えていた。フレジュールまで行けば通常であればロープウェイでバス道に下れるはずが今年は工事中で歩かねばならない。しかしフレジュールから下ならば人の数も多くなり危機は脱したと考えてよい。そのように自分を励ましながらフレジュールを目指した。

ヤマレコに登録した山行記録の地図

図1から図4のGoogleマップでは登山道が明確ではない。
ヤマレコのOpenTopoMapでは登山道が黒い細点線で示されているのでわかりやすい。

ヤマレコの地図では登山道がわかるので参考にされたい。

上記ヤマレコ地図でGPSログが分岐点で間違った方向に進んでしまった様子がよくわかる。その部分を切り取って示す。

図5-分岐点

展望を楽しみながら歩けるはずだったコース

残念ながら予定していたコースを断念したが、どのようなコースなのかを本から紹介する。
「スイスアルプス山歩き・花紀行」改訂版 市原芳夫著からの引用

モンブラン山群や氷河のパノラマを展望するなら、谷の北側に上がるといい。
プラン・プラとブレヴァン、フレジュールとランデックスへ、ロープウェイやリフトで上がれば2000m以上の高さから、広がりと奥行きのある眺めを得られる。
谷の北側の赤い針峰群の山塊には、上・中・下の3段にパノラマコースがある。

モンブランはシャモニからは10キロ、ミディからでも6キロ離れているので、山頂は平坦に見え、高さを感じないが、ブレヴァンは絶好のパノラマ展望台。
谷底からボソン氷河を腹に抱き浮かび上がった白い巨人に感動する。

プラン・プラ~フレジュール
中間駅間の横歩きは、谷の南側に林立する針峰群、とりわけ大きなエギーユ・ヴェルト4122mと並びたち天を刺す剣ドリュなど、スターがつぎつぎと現れる。

モンブラン展望トレック
ブレヴァン湖、ベラシャット小屋
ブレヴァンの頂上駅から南へ下るこのコースは、有名なロング・トレイルのツール・デュ・モンブランTMBの最終区間であり、GR5トレイルの一部でもある。
モンブランを正面に歩く、数少ないコースであり、小さな湖、山のグルメのレストランなど魅力いっぱいのコース。

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました